こんにちは。
今回は「スポーツ現場でのサプリメントの活用と摂取におけるアスリートの責任〜基本編〜」についてお話しをさせていただきます。
参考文献
今回は「臨床スポーツ医学 2018年11月号 現場で使えるスポーツ栄養学」を参考にさせていただきました。
筆者は管理栄養士として活躍されている小井土幸恵氏です。
リンクを記載しますので、詳細を知りたい方はご参照ください。
https://chibajets.jp/team/staffs/koido/
はじめに
さて、早速本題に入りたいと思います。
みなさんはサプリメントを摂取した経験はありますか?
サプリメントはアマチュアからプロフェッショナルのアスリートに広く利用されています。また、世代は関係なく利用されています。
サプリメントは多種多様で、摂取率は拡大の一途を辿っています。
アスリートは試合と練習の前後、チーム内でポジション争いをしているシーンでサプリメントに頼る傾向が強くなる傾向がみられます。特に、そのレベルが僅差である際にこの傾向が強くなります。
国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Sciences:JISS)の調査によると、ロンドンオリンピックやソチオリンピックに出場した日本のトップレベルのアスリートにおけるサプリメントの摂取率は8割を超えています。
しかし、その安全性や有効性について、全てのアスリートが正しく認識しているとは言えないのが現実です。
トップレベルのアスリートは専属の医師や理学療法士などからアドバイスを受けることができます。
しかし、アマチュアのアスリートは時間や予算などの関係から専門的な支援を受けることが困難である場合が多く、自己判断と自己責任でサプリメントの摂取をしなければならない傾向が強くなります。字重要なのは、どのカテゴリーのアスリートでもサプリメントに対する質が高い確実な根拠を吟味し、摂取への意志と責任感を持たなければならないことです。また、サプリメントの副反応による危険性を十分に理解する必要もあります。
本稿では、サプリメントの科学的根拠について解説します。
また、摂取するために必要なプロセスについて検討し、アスリートがサプリメントを使用して後悔しないための一助になることを願っています。
サプリメントとは?
サプリメントとは一体何でしょうか?
アメリカでは、The US Food and Drug Administration(FDA)において、「サプリメントとは、栄養価を更に高めるための食品成分の摂取を目的とした製品」と定義しています。
ヨーロッパでも、The European Food Safety Authority(EFSA)において同様にサプリメントに対する定義が存在します。
しかし、日本国内においてはサプリメントに関する法律的な定義が存在しません。
そのため、今回は、スポーツサプリメントを用途によって以下のように分類しています。
(1)エルゴジェニックエイド
運動パフォーマンスに影響する可能性がある栄養素を含有したサプリメントです。
科学的根拠が立証されているか検討して摂取する必要があります。
例:・βアラニン ・カフェイン ・クレアチン ・重炭酸塩 ・硝酸
(2)スポーツフード
日常の食事で摂取することが可能な栄養素を含有したサプリメントです。
アスリートにとっては身近に感じる商品ばかりだと思います。
我々は食事の摂取量には限度があります。そのため、運動量が増加することで必要な栄養素を食事から摂取することが困難となる場合があります。その場合は、サプリメントで必要な栄養素を補う必要が出てきます。その際は、サプリメントの使用を検討する余地はあります。
しかし、成長期のアスリートは食習慣と生活習慣を見直し、食事から栄養素やエネルギーの必要量を摂取することが理想的です。安易にサプリメントに頼るのではなく、食事から摂取できないか検討することで、食事に対するセルフマネジメント能力の獲得に繋がります。
例:・エナジードリンク
詳細は日本スポーツ振興センター(Japan Sport Council:JSC)の記事をご参照ください。
以下も同様にリンクを記載しておきます。
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/sports_nutrition/tabid/1499/Default.aspx
・スポーツゼリー
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/sports_nutrition/tabid/1495/Default.aspx
・スポーツドリンク
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/sports_nutrition/tabid/1494/Default.aspx
・スポーツバー
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/sports_nutrition/tabid/1498/Default.aspx
・電解質タブレット
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/sports_nutrition/tabid/1496/Default.aspx
・プロテインパウダー
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/sports_nutrition/tabid/1497/Default.aspx
(3)メディカルサプリメント
栄養素欠乏症の改善や予防のために使用することを目的としたサプリメントです。
例:・n-3系脂肪酸 ・カルシウム ・鉄 ・ビタミンD ・ミネラル
サプリメントの選択や摂取にあたってアスリートが注意すべき点
アスリートは様々なルートでサプリメントを購入しています。
サプリメントの具体的な購入先はインターネット、カタログ、個人輸入、店舗、訪問販売などがあります。どのルートから入手したものであっても、アスリートはサプリメントの選択に注意を払い、摂取において強い責任感を持たなくてはいけません。
サプリメントの選択や摂取に必要なプロセス
アスリートは適切なプロセスに沿ってサプリメントの安全性や実用性を検討する必要があります。
(1)栄養素の欠乏や不足があるか血液検査や問診などで評価する。
(2)食事で解決できないか検討する。
(3)食事で解決できない場合はサプリメントで改善する可能性があるか検討する。
(4)以下の事項を確認する
・安全性が確認されているか?
・ゴールを達成するための明確なプランが設定されているか?
・世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency:WADA)が規定している禁止物質は含まれていないか?
・副反応による危険性を理解しているか
・本人が使用する必要性を感じているか?
(5)トライアルとして使用して目標を達成する見込みがあるポジティブな結果が得られたか評価する。
(6)本使用
ドーピング
アスリートとドーピングは度々ニュースなどで報道されることがあり、切り離すことができない問題です。
日本アンチ・ドーピング機構(Japan Anti-Doping Agency:JADA)ではドーピング検査について情報を公開しており、アスリートのドーピングに対して毅然とした姿勢を示しています。
JADAのリンクを記載しますので、指導者、選手、保護者の方々はご参照ください。
Anti-Doping
1999年にWADAは設立されました。
WADAは、Anti-Dopingに対する国際機関で、Anti-Doping活動の中核となる国際的な基準や規定を策定しています。
WADAでは禁止物質/方法が記載された禁止表国際基準を毎年更新しており、アスリートは禁止物質が含まれていないかを毎年確認する必要があります。
しかし、アスリートが自分で禁止物質が含まれていないかを確認することは現実的ではありません。
また、WADAによるAnti-Dopingの認証制度は存在しません。そのため、WADAにAnti-Dopingの認証を受けていると謳っている商品に手を出すことは危険性が非常に高いと言えます。
そこで、アスリートは独立した第三者機関で分析され、認証を受けたサプリメントを選択することでドーピングとならないように工夫する必要があります。
WADAのリンクを記載しますので、サプリメントの使用を検討している方はご参照ください。
日本のAnti-Doping
国内では2018年6月13日にスポーツにおけるドーピング防止活動の推進に関する法律案が可決され、法律が制定されました。
法律の内容は以下の通りです。
・Anti-Dopingに関連する専門家の育成
・Anti-Dopingに関する一般人の教育
・関係機関間の情報共有の仕組み
・啓蒙活動の推進
今後クリーンなスポーツ活動の実現に向け、Anti-Doping活動を進めていかなければなりません。
アスリートは摂取するサプリメントに対する責任を持つことが重要です。
食品に関する科学的な知識を身につけ、摂取しようとしている、若しくは摂取しているサプリメントの安全性や成分に十分な注意を払うべきである。
おわりに
アスリートの栄養サポートの場面において、医療スタッフと選手と間ではサプリメントの摂取が大前提となっているのが現状です。
しかし、安易な考えでサプリメントを摂取することは、依存症を発症する危険性を孕んでいます。
本来、スポーツにおける選択肢の一部がサプリメントであるべきです。今後は、食事から栄養を摂取できないかを最優先に検討する意識を持つことが重要です。
左記をアスリート本人と医療スタッフが十分に認識し、「食」へのセルフマネジメント能力を獲得し、向上高させることを目的として取り組む必要があります。