こんにちは。BooSTの畠山です。
今回は「疲労を最速で回復・蓄積させないための糖質摂取」についてお話しをさせていただきます。
参考文献
今回は「臨床スポーツ医学 2018年11月号 現場で使えるスポーツ栄養学」を参考にさせていただきました。
筆者は宮崎大学 教育学部 塩瀬圭佑氏です。
リンクを記載しますので、詳細を知りたい方はご参照ください。
https://www.miyazaki-u.ac.jp/edu/
はじめに
アスリートがパフォーマンスを向上させるためには、トレーニングの基本原則に則り、より医学的かつ効率的にトレーニングに励む必要があります。
そのため、トレーニング後は疲労を回復し、次回も高いクオリティで反復してトレーニングに取り組むために積極的にコンディションを調整する必要があります。
しかし、コンディションの調整に苦手意識があるアスリートは多いと思います。
一般的に高強度のトレーニングにおいて消費されるエネルギーはグリコーゲンという糖質がメインとなります。
グリコーゲンは肝臓や骨格筋に貯蔵されています。
骨格筋に貯蔵されているグリコーゲンの標準量は約15g/kgとされています。
体重が70kg、体脂肪率が10%前後の成人男性の場合、グリコーゲンの総貯蔵量は約400gであると計算されます。
また、肝臓にも貯蔵されているグリコーゲンを合算しても約2000kcalのエネルギー量にしか相当しないため、試合やトレーニングによってグリコーゲンが枯渇してしまう可能性があります。
トレーニングの基本原則
今回は、トレーニングの基本原則をサラッとご紹介します。
○可逆性の原則
トレーニングを中止すると元の状態に戻るという原則。
○過負荷の原則
トレーニングで結果を得るためには一定の負荷を加える必要があるという原則。
○特異性の原則
特定の筋の肥大を目的とする場合はその筋に応じたトレーニングを行う必要があるという法則。
グリコーゲンと疲労の関係
骨格筋に貯蔵されているグリコーゲンの量が減少すると疲労の原因となります。
グリコーゲンの量が通常時の約50%まで減少した状態でスプリントトレーニングを行うと、その強度が3〜7%減弱してしまうことが報告されています。
この状態でトレーニングを繰り返していると意識をしていない間に差がつくことになります。
一方で、積極的にグリコーゲンを摂取してリカバリーすることによって、ランニング時の疲労の蓄積を防止することができます。
そのため、疲労を予防し、高度なパフォーマンスを発揮するためには、トレーニングによって消費されたグリコーゲンを補う必要があります。
これから具体的なリカバリーの方法をお伝えします。
運動後のグリコーゲンの摂取方法
○タイミング
糖質を摂取するタイミングに関しては、トレーニングの2時間以内に摂取することで骨格筋のグリコーゲンの合成を促進できることが一般的に知られています。
国際オリンピック委員会(International Olympic Committee:IOC)によるガイドラインでは、次回の試合が8時間以内に予定されている場合、1g/kg×1時間×4回の間隔で摂取することを推奨しています。
例)体重が50kgの人の場合
1g×50kg×4時間=200gの糖質を摂取する必要があります。
実際の食事に換算すると、150gの白米には約50gの糖質が含まれているので、600gの白米を4時間以内に摂取することが必要となります。
一方で、次回の試合まで24時間以上の時間が確保されている場合、糖質を補給するタイミングによってグリコーゲンの合成に差は認めらレていません。
そのため、糖質を摂取するタイミングよりも、トレーニングの強度に応じて1日あたりに推奨される糖質を確実に摂取できるかが鍵となります。
○蛋白質との関係
糖質を単独で摂取した場合と比較して、蛋白質と糖質を同時に摂取した場合では、グリコーゲンの合成率が高くなります。
具体的には、糖質を単独で摂取した場合は1.4g/kg/時間で上限に達します。
一方で、約20gの蛋白質と同時に摂取した場合では1.2g/kg/時で上限に達します。
つまり、蛋白質と糖質を同時に摂取することで、脂質の合成を抑えて、疲労を回復することができることが示唆されています。
○トレーニングの強度
アメリカスポーツ医学会(American College of Sports Medicine:ACSM)では、トレーニングの強度によって、糖質の推奨摂取量が異なります。
低強度の場合では3〜5kg/日の摂取が推奨されています。
60分以内の中強度のトレーニングの場合では5〜7g/kg/日の摂取が目安となります。
60〜180分の中〜高強度トレーニングの場合では6〜10g/kg/日も摂取しなければなりません。
運動後の糖質摂取における工夫
1日あたりの糖質摂取量は日本はヨーロッパと比較して食事の糖質含有量が多いことが知られており、一般的には約5〜6g/kg/日を摂取しているとされています。
そのため、低強度のトレーニングでは、積極的に糖質を摂取しなくても標準的な食事を摂っていれば、翌日には骨格筋内のグリコーゲンの量は十分に回復するとされています。
一方、海外では、食事の変化から糖質摂取量が低下する可能性があります。
そのため、100%オレンジジュースやバナナなど、現地で入手しやすい食品を利用する工夫が必要となります。
日本人であれば以下の食品はスーパーなどで容易に購入でき、糖質含有率も高いため、運動後に糖質を補給にするには以下の表を参考にすることをお勧めします。
IOCによるガイドラインで設定されている1g/kg×1時間×4回という目標を達成するのは、現実的ではない場合も多くあります。
そのため、ゼリー飲料やスポーツドリンクといった飲料から摂取する方法もあります。
これらは、運動によって喪失した水分やミネラルの摂取を効率よく行うことができます。
あんぱんやバナナといった高い糖質含有量が認められている食品から摂取することが、目標を達成するためのポイントとなります。
最近では、運動後のエネルギー補給を目的としてスポーツ羊羹が注目されています。甘さを控えめにしているため食べやすく、持ち運びも容易なので、お試しする価値はあると思います。
なんと、あんまんで有名な井村屋さんが販売しておりました!
リンクを記載しておくので気になる方はご参照ください。
https://www.imuraya.co.jp/goods/yokan/c-sports/
このように、手軽に摂取できる食品を利用し、必要となる糖質を確保することが鍵となります。
また、先述したように、蛋白質と糖質を同時に摂取することで、グリコーゲンの合成が促進されます。
蛋白質と糖質を同時に摂取するポイントとしては、鮭や卵などが入ったおにぎりや、チーズやハムが入ったサンドウィッチを摂取することが効率的です。
糖質と乳製品を同時に摂取することで、インスリンの分泌量が増加し、肝臓や骨格筋での糖の取り込みが促進されます。そのため、糖質だけを摂取した場合と比較して、グリコーゲンの合成率が向上することが最近の実験で証明されています。
バナナとヨーグルトの組み合わせは、相性がいい組み合わせとして非常にお勧めです。
特に食欲が低下する夏には是非実践してみる価値はあると思います。
おわりに
今回は、疲労を最速で回復・蓄積させないための糖質摂取というテーマで糖質に着目してお話をさせていただきました。
グリコーゲンと疲労は相関関係にあります。そのため、高強度のトレーニングを行う際や、試合でハイパフォーマンスを発揮するために日常的に必要となる糖質を摂取する努力はしておいて損はありません。
一方、疲労のメカニズムは非常に複雑です。そのため、糖質だけを摂取しておけば疲労の回復や蓄積を予防することはできないことを述べたいと思います。