【医療・介護講座】肝機能の低下は骨格筋の質に影響する!?〜骨格筋内脂肪が増加する原因です〜

【医療・介護講座】肝機能の低下は骨格筋の質に影響する!?〜骨格筋内脂肪が増加する原因です〜

こんにちは。BooSTの畠山です。

今回は「肝機能の低下は骨格筋の質に影響する!?〜骨格筋内脂肪が増加する原因です〜」についてお話しをさせていただきます。

参考文献

今回は「理学療法ジャーナル 2022年6月号 医療現場におけるサルコペニア・フレイル」を参考にさせていただきました。

筆者は大阪労災病院 治療就労両立支援センター 理学療法士 浅田史成氏です。

リンクを記載しますので、詳細を知りたい方はご参照ください。

https://researchmap.jp/read0146361

はじめに

サルコペニアは、“筋力低下”と“骨格筋量減少”の両者を合併している状態を指します。

一方、ダイナペニア(dynapenia)は、“筋力低下”のみの状態を指します。

そのため、サルコペニアと比較して圧倒的に有病者数が多くなり、有害健康転帰(adverse health outcomes)に大きな影響を及ぼします。

有害健康転帰とは、転倒、入院、要介護への移行、死亡など、健康に有害となるイベンが発生することを指します。

理学療法士は、動作分析から問題点を抽出して、日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)の改善を目指します。

ADLと筋力には相関が認められているため、臨床ではサルコペニアよりもダイナペニアを重視する必要があります。

肝臓は三大栄養素(脂質・蛋白質・糖質)の代謝を担う中心的な臓器です。

そのため、肝機能が低下すると、骨格筋内脂肪も増加し、骨格筋の質が低下する原因となります。

骨格筋内脂肪の増加は、インスリン抵抗性に関連しており、糖尿病の発症にも繋がります。

今回は運動器や代謝のプロフェッショナルである理学療法士がサルコペニアと肝疾患の有病率、骨格筋減少率、評価にフォーカスを当てて解説します。

サルコペニアと肝疾患の有病率

海外では、肝疾患におけるサルコペニアの有病率は60〜70歳で5〜13%、80歳以上で11〜50%と報告されています。

日本では、肝疾患とサルコペニアを合併している割合は10〜70%とされています。

また、骨格筋減少率は2.2%/yearとされています。

肝硬変の重症度を評価するChild-Pugh分類では、重度の肝硬変を示すgrade Cにおいて、骨格筋減少率は6.1%/yearと報告があります。

肝臓は三大栄養素(脂質・蛋白質・糖質)の代謝において中心となる臓器です。

三大栄養素の代謝が低下すると、骨格筋の機能を維持することができず、サルコペニアを誘発します。

サルコペニアと肝疾患の評価

日本肝臓学会により、肝疾患におけるサルコペニアの判定基準(第1版)が作成されました。

↓肝疾患におけるサルコペニアの判定基準(第1版)↓

https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/sarcopenia_criterion_v1.pdf

↓肝疾患におけるサルコペニアの判定基準(第2版)↓

https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/sarcopenia_criterion_v2.pdf

この基準では、外来でサルコペニアを簡便に判定できる仕様となっています。

具体的には

・65歳以上の年齢制限を撤廃した

・歩行速度の基準を省略した

そのため、肝疾患の方のサルコペニアの診断基準は握力と生体電気インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analysis:BIA)で診断されることになります。

サルコペニアの判定に最も重要だと言っても過言でない骨格筋量の測定は「全身の骨格筋量を算出する」という原則があります。

BIAで全身の骨格筋量を算出することは理にかなっています。

しかし、BIAは装置によっては約1割の誤差が生じる場合があるため、測定条件を統一しておく必要があり、退院や転院の際は注意が必要です。

身長が160cmの人と身長が180cmの人を比較した場合、後者の方が必要な骨格筋量は多くなります。

つまり、動作の遂行に必要な骨格筋量は身長や体重などの個人差が大きいことを表しているため、測定条件は統一もしくは補正をする必要があります。

骨格筋指数(Skeletal Muscle Mass Index:SMI)がスクリーニング検査に有効だと報告されています。

SMIは以下の式によって算出できるので、計算してみてください。

SMI=骨格筋量(kg)/身長2

肝疾患では、骨格筋内脂肪が増加します。

そのため、骨格筋量を過大評価に繋がる危険性があります。

BIAで骨格筋量を評価する際には、位相角も併せて確認すると、過大評価を防止できます。

<併せて読みたい記事>

BIAで算出される位相角って何?〜男性は4.0° 女性は3.5°が基準です〜

また、日常的な診療ではComputed Tomography(CT)を撮影する機会も多く、CT画像から解析した骨格筋量でサルコペニアを判定する場合もあります。

しかし、CT画像から骨格筋量を鑑別するためのカットオフ値が統一されていないため、研究間の比較は注意が要です。

この場合のカットオフ値は、男性で43cm2/m2、女性で38cm2/m2とされています。

おわりに

今回は運動器や代謝のプロフェッショナルである理学療法士がサルコペニアと肝疾患の有病率、病態、有害健康転帰(adverse health outcomes)への影響にフォーカスを当てて解説しました。

肝臓は三大栄養素(脂質・蛋白質・糖質)を代謝を担う中心的な臓器です。

重度の肝硬変では、骨格筋減少率は6.1%/yearと報告があり、サルコペニアを発症・進行する原因となります。

一見、肝臓と骨格筋は関連が薄いように思われますが、全身の臓器は密接に関連し合っています。

部分的な障害は、将来的に重大な症状を引き起こすことを理解して予防に努めてください。

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