こんにちは。BooSTの畠山です。
今回は「日本の介護は遅れている〜海外のリエイブルメントを参考にして健康寿命を伸ばそう!〜」についてお話しをさせていただきます。
参考文献
今回は「理学療法ジャーナル 2020年3月号 地域における予防の効果」を参考にさせていただきました。
筆者は一般社団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 副部長 服部 真治氏です。
リンクを記載しますので、詳細を知りたい方はご参照ください。
https://www.ihep.jp/researcher/shinji_hattori/
はじめに
皆さんは“リエイブルメント”をお聞きしたことはありますか?
リエイブルメントを日本語に直訳すると“再自立”を意味します。
オーストラリアやデンマークでは、フレイルから要介護への進行を予防することを目的に理学療法士がリハビリテーションを実施し、身体機能の向上を図る取り組みがされています。
前回の短期集中予防サービスとの関連付けて解説したいと思います。
リエイブルメントとは?
リエイブルメントには短期集中予防サービスと同様のコンセプトがあります。
短期集中予防サービスは3〜6ヶ月と期間が限定されています。
リエイブルメントは4〜12週間と期間が設定されている点が大きな違いです。
イングランでは、理学療法士(Physical Therapist:PT)や作業療法士(Occupational Therapist:OT)が利用者の自宅に訪問して評価を行い、社会的、身体的、心理的機能の改善に向けた計画を作成し、必要なサービスを提供するようになっています。
ウェールズでは、利用者の70%以上がサービス終了後に継続的な支援を必要としなかったと報告され、地方公共団体への財政的な効果もあるとされています。
オーストラリアでは、リエイブルメントは他のサービスと比較して、サービスの提供時間が短く、在宅サービスの利用が減少するメリットがあり、5年間で約116万円/人も削減できると推定されています。
日本の要支援の認定者数は約191万人とされているため、相当な金額を削減でき、育児手当の拡充や、インフラストラクチャーの整備などに財源を割けることは容易に想像できます。
リエイブルメントはADL(Activities of Daily Living:ADL)やQOL(Quality Of Life)の改善に肯定的な効果があることが報告されており、費用対効果が高いため、日本でも普及することが推察されます。
今後、日本でも健康に対するインセンティブは課されると思います。
医療格差は確実に拡大する社会が到来するので、いつまでも政府や病院に頼る態度は旧態依然です。
我々も重症化した方の治療はできません。予防に対する意識を持って日常生活を送っていただくことをオススメします。
しかし、リエイブルメントはまだ歴史が浅いため、効果を検証した研究が少ないのが課題です。
今後の研究に期待しましょう。
日本でのリエイブルメントの効果
日本では、リエイブルメントが定着していませんが、大阪市寝屋川市における報告があります。
<期間>
2018年2月15日〜2018年11月30日(登録期間:1.5ヶ月、介入期間:5ヶ月、フォローアップ期間:3ヶ月)
<対象>
要支援認定を受けた高齢者
<対象外>
・難病
・日常生活自立度判定基準でⅢ度以上と診断された認知症
・末期の悪性新生物
<方法>
(1)ランダムにグループ分けする。
①介護保険のサービスのみを受ける対象群
②通所型サービスCを追加で受ける介入群
(2)管理栄養士、歯科衛生士、理学療法士が20分間/回の「面談」を実施する。
(3)介入して12週間後に①と②のどちらが介護保険サービスの未利用状態が継続している割合が高いかを検討する。
<結果>
①は介護サービスからの卒業の割合が3.8%
②は介護サービスからの卒業の割合が11.1%
両者に有害健康転帰(adverse health outcomes)の発生率の差は認められませんでした。
有害健康転帰とは、転倒、入院、要介護への移行、死亡など、健康に有害となるイベンが発生することを指します。
<結論>
介護保険サービスからの“卒業”のためには、短期集中予防サービスを利用することが有効です。
<展望>
オーストラリアやデンマークでは、リエイブルメントが基本的なサービスとして位置付けられています。
日本では、短期集中予防サービスを実施するかどうかは地方公共団体の選択に委ねられています。
実施されていたとしても適切なプログラムか検証するまでに至っていないのが現状です。
地方公共団体は短期集中予防サービスが原則として3ヶ月で終了することから、要支援と認定された方に質の高いサービスを提供するために信頼できる事業者と契約することが重要です。
定期的に連携を図り、地域の実情に応じた適切なプログラムを開発することで、健康寿命の延伸に寄与するのではないでしょうか。
理学療法士や作業療法士などのリハビリテーション専門職は、利用者がセルフマネジメント能力を獲得するために“動機付け面談”の重要性を認識して介入することが最も大切です。
おわりに
リエイブルメントの目的は「失われた機能に適応したり、活動を再開するための自信や能力を取り戻す」ことです。
自立した生活のためには、利用者が“セルフマネジメント能力”を身につける必要があります。
理学療法士や作業療法士が動機付けを行うことで利用者にPDCAサイクルによる振り返りを通じて意欲を引き出すことが必要です。
つまり、短期集中予防サービスでは、行動変容モデルを考慮しながら介入することが重要です。
実は、地元である五島市にリエイブルメントを推奨するために協力させてほしいと提案したのですが、担当者はペン回しを始めて全く話を聞いてもらえませんでした(笑)
過疎地だからこそ短期集中予防サービスやリエイブルメントを推奨すべきだと思います。
医療や介護の体制をどのように維持するのでしょうか?
今後の動向を静観したいと思います。
BooSTは合同会社MYSと連携して訪問リハビリテーションを提供しています。
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