こんにちは。BooSTの畠山です。
今回は「現在の技術でも骨格筋量は正確に測定できない!?〜キーワードは細胞外水分比〜」についてお話しをさせていただきます。
参考文献
今回は「イチからわかる!サルコペニア Q&A」を参考にさせていただきました。
筆者は筑波大学 山田 実氏です。
リンクを記載しますので、詳細を知りたい方はご参照ください。
https://www2.human.tsukuba.ac.jp/faculty_j/yamada-minoru
はじめに
2010年にThe European Working Group for Sarcopenia in Older People(EWGSOP)によりサルコペニアの診断基準が提唱されました。
2014年にAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によってアジア版のサルコペニアの診断基準が
提唱されました。
併せて読みたい記事
↓サルコペニアの診断〜握力・骨格筋量・歩行速度がキーワード!〜↓
サルコペニアの診断には握力・骨格筋量・歩行速度の評価が必須項目となっているため、これらの指標は慎重に評価する必要があります。
骨格筋は断層的な構造を呈しています。
https://www.kango-roo.com/learning/2096/
理想は筋線維の量だけを抽出して測定することですが、現在の技術では不可能です。
現在はどのようにして骨格筋量を算出しているか疑問に感じませんか?
今回は運動器のプロフェッショナルである理学療法士が骨格筋量の測定にフォーカスを当てて解説します。
現在の骨格筋量の測定方法
骨格筋量を測定するには、最外層の筋外膜の内部に存在する組織の体積を計測することが一般的です。
しかし、この筋外膜の内部には収縮要素である筋線維だけでなく、非収縮要素である脂肪組織や水分も存在するため、骨格筋量を過大評価してしまう危険性があります。
筋力は筋横断面積に比例するため、収縮要素を正確に測定することは、筋力を正確に評価することにも繋がるはずです。
しかし、高齢者は筋力が筋横断面積に比例しない場合があります。
技術の進歩によって、少しずつ問題が解消されていますが、収縮要素のみを正確に測定するには至っていません。
本日は、数多ある測定の中でも医学的根拠(Evidence Based Medicine:EBM)が高い“BIA”という方法をご紹介させていただきます。
AWGSによる診断のアルゴリズム
AWGSによるサルコペニアの診断のアルゴリズムを思い出してください。
AWGSでは、生体電気インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analysis:BIA)と二重エネルギーX線吸収法(Dual Energy X-ray Absorptiometry:DXA)のいずれかの方法で骨格筋量を測定することが認められています。
○BIA
○DXA
AWGSによるサルコペニアの診断では“BIA”の使用が認められたことに注目が集まりました。
BIAは多周波と低周波を体内に流すことで抵抗値(impedance)を測定し、細胞外水分比(ECW/TBW)を算出する仕組みとなっています。
それぞれの電流の特徴を表にしました。
エネルギー | 細胞膜の通過 | |
高周波 | 高い | ○ |
低周波 | 低い | × |
つまり、電流が筋細胞の細胞膜をどれくらい通過したかを測定することで、骨格筋量を算出するという原理です。
総水分量に対する細胞外水分比は、加齢による退行性変化により増加するため、細胞内水分比は筋力と相関することが示されています。
AWGSによるサルコペニアの診断は非常に汎用性が高い基準となりました。
しかし、BIAは測定条件を統一しておく必要があります。
装置によっては約1%の誤差が生じる場合もあるため、転院先や入院先で比較する際は注意が必要です。
おわりに
骨格筋量の測定には2パターンの考え方があります。
1つ目は、収縮要素のみを測定するという考え方です。
2つ目は、筋外膜の内部に存在する組織の体積を計測するという考え方です。
前者の方法が理想的ですが、現時点での技術では実現が困難だと考えられています。
後者の方法は一般的に用いられていますが、骨格筋量を過大評価してしまう危険性があります。
加齢による退行性変化により細胞外水分比は増加します。
これが高齢者の筋横断面積と筋力が比例しない原因になります。
サルコペニアの診断に必要となる握力・骨格筋量・歩行速度の評価から、総合的に判断することが重要です。
お困りの際は、お近くの医療機関に相談されてください。
BooSTは合同会社MYS様と連携して訪問リハビリテーションを提供しています。
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