こんにちは。BooSTの畠山です。
今回は「夏前のシーズンの過ごし方でライバルに差をつける〜インターハイで活躍する選手になろう!〜」についてお話しをさせていただきます。
参考文献
今回は「臨床スポーツ医学 2018年月号 暑さと熱中症対策-スポーツの安全とパフォーマンスのために-」を参考にさせていただきました。
筆者は新潟大学 教育学部 准教授 天野 達郎氏です。
リンクを記載しますので、詳細を知りたい方はご参照ください。
https://researchers.adm.niigata-u.ac.jp/html/200000913_ja.html
はじめに
「人間の体の60%は水で構成されている」というフレーズは人生で一度はお聞きしたことがあると思います。
今回は、夏前のシーズンの過ごし方でライバルに差をつけるためのエッセンスをお伝えします。
体内の水分
医学的に生体内にある液体成分の総称を“体液”と呼んでいます。
体液は細胞外の水分である細胞外液と、細胞内の水分である細胞内液(40%)に分類されます。
さらに、細胞外液は血管外の間質液(15%)と、血管内の血漿(5%)に分類されます。
では、具体的にどのくらいの割合で生体内に体液が存在しているのでしょうか?
・新生児:約80%
・成人男性:約60%
・成人女性:約55%
・高齢者:約50%
重度の熱中症を発症して集中治療室(Intensive Care Unit:ICU)で治療が必要となるのは独居の高齢者が大半を占めています。
高齢者は体液の割合が約50%しかないことを考慮すると脱水症状や熱中症を発症しやすいことは納得がいきます。特に夏季は注意が必要となります。
私は、訪問リハビリテーションでご自宅を訪問した際に水分摂取量や尿量をチェックして自宅での死亡事故を防止するように努めています。
しかし、体液の割合は体脂肪量に強く依存しており個人差が大きいため、一概には当てはまらないことを補足しておきます。
脱水時の症状で脱水率を推測する
我々は体温の上昇を汗によって抑制しています。
しかし、多量の発汗により体液を損失することで汗を産生することができなくなります。
結果的に体温の上昇を抑制することができなくなり、様々な症状を惹起します。
水分損失率 | 症状 |
2% | 口渇感 |
3% | ・生あくび ・重度の口渇感 ・食欲不振 |
4% | ・イライラ ・体温上昇 ・尿量減少・皮膚の紅潮 ・疲労感 |
5% | 頭痛 |
8〜10% | 痙攣 |
20%以上 | 死亡 |
脱水時の症状で脱水率を推測することができます。
監督や保護者の方々は選手の生命を守るために必要な知識ですので参考にされてください。
体液量に影響を及ぼす因子
○増加因子
・高強度トレーニング ・暑熱順化
一般的に体液のNaCl–濃度は約0.9%です。
一方、汗に含まれるNaCl–濃度は約0.1〜0.4%です。これは、体液の約1/5〜1/2の値です。
汗の原液は細胞外液から産生されます。
汗の原液は水やCl–、K+、Na+などのイオンが含まれています。その中でもNa+が最も多く含まれています。
導管を通過する際に一部のイオンが汗腺に再吸収されるため、イオンの濃度は原液よりも低下した状態で皮膚に出てきます。
イオン再吸収能は高強度のトレーニングで向上することが報告されています。
30℃以上の真夏日や35℃以上の猛暑日に汗を舐めると「しょっぱい」と感じたことはありませんか?
発汗量の増加に比例して汗のNa+濃度は上昇します。
しかし、暑熱順化している選手はNa+再吸収が向上し、汗に含まれるNaCl–の濃度は低下します。
つまり、体内により多くのNaCl–が保持され、重度の脱水に陥る危険性が低下します。また、体液の損失を最大限に抑制することができ、循環血漿量を維持して持久力を向上させる効果も認められています。
イオン再吸収能は体温や体液を一定に維持するために重要です。
気温が上昇する7月や8月からトレーニングを開始しても手遅れということを示しています。
夏季に突入する前の過ごし方でライバルに差を付けなければ1年間を棒に振る結果になります。
○減少因子
・脱水 ・不活動 ・慢性疾患
真夏日や猛暑日には、体温を低下させるために発汗量が増加します。成人男性では2L/hour以上になると報告されています。
汗は細胞外液から産生されるため、発汗量に比例して体液量が低下して脱水に陥ります。
そのため、運動の前後の体重を測定することで脱水量を算出することができます。
おわりに
今回、イオン再吸収能を向上させるメリットや、高強度のトレーニングが必要となることを述べました。
持久力の向上や、脱水の防止のために夏前のシーズンを有意義に過ごしてライバルに差をつけて下さい。
7月や8月から高強度トレーニングを開始しても効果はありますので安心してください。
今回の記事がパフォーマンスを向上させる一助になることを願っています。