こんにちは。
今回は「スポーツ現場でのサプリメントの活用と摂取におけるアスリートの責任〜応用編〜」についてお話しをさせていただきます。
参考文献
今回も「臨床スポーツ医学 2018年11月号 現場で使えるスポーツ栄養学」を参考にさせていただきました。
筆者は管理栄養士として活躍されている小井土幸恵氏です。
リンクを記載しますので、詳細を知りたい方はご参照ください。
https://chibajets.jp/team/staffs/koido/
はじめに
さて、早速本題に入りたいと思います。
先週、スポーツ現場でのサプリメントの活用と摂取におけるアスリートの責任〜基本編〜を投稿しましたが、今回は応用編をお届けしたいと思います。
エルゴジェニックエイド
運動パフォーマンスに影響する可能性がある栄養素を含有したサプリメントです。
エルゴジェニックエイドに分類されるサプリメントと具体的な摂取方法を以下に記載します。
(1)β-アラニン
β-アラニンを継続的に摂取することでカルノシンを増量することができます。
カルノシンは細胞内の緩衝作用を増強する効果が認められています。
β-アラニンを0.8〜1.6g/3〜4時間、10〜12週間、継続的に摂取するプロトコルが報告されています。
海外ではサプリメントとして使用できます。
しかし、日本では食品としての利用が禁止されているため、β-アラニンを含むアンセリンやカルノシンなどが利用されています。
(2)カフェイン
カフェインはコーヒーや緑茶など、日常の食生活でも摂取する機会が多いと思います。
そんなカフェインとスポーツには密接な関係があります。
100〜300mgの低容量カフェインの摂取は持久系競技のパフォーマンス向上が認められます。
3〜6mg/kgの中容量カフェインに摂取することで、繰り返し・高強度・短時間のスプリント能力が要求される競技のパフォーマンス向上が認められます。運動の50〜60分前に摂取することがポイントです。
9mg/kg以上の高容量カフェインの摂取はパフォーマンス向上は認められません。むしろ、副作用が出現する危険性が向上するため、摂取は推奨されません。
私の友人の競輪選手は試合前にエナジードリンクを飲んでいるという話をしていました。
競輪だと中容量カフェインを摂取する必要があります。友人の体重は約52kgです。そのため、52kg×3〜6mg=156〜312mgが推奨される摂取量となります。
飲用している商品には40mg/本のカフェインしか含まれておらず、パフォーマンスの向上を目的とした場合は約4〜8本分の計算になります。
このように、エナジードリンクだけでカフェインを摂取することは現実的ではありません。
何度も申し上げますが、サプリメントは栄養の主役にはなれません。
主役の補助であることを忘れてはいけません。
(3)クレアチン
クレアチンは筋を構成している蛋白質です。
クレアチンを約5g/日を5〜7日間、継続的に摂取することで、筋のクレアチン濃度が増加します。
その後もクレアチンを3〜5g/日を摂取することで効果を維持できることが報告されています。
クレアチンを摂取することで高強度の負荷が反復的に要求される競技のパフォーマンスの向上が認められます。
しかし、クレアチンは保水効果があり、体重が1〜2kg増量する副作用が生じます。そのため、階級別競技や跳躍競技のアスリートは慎重に摂取する必要があります。
(4)硝酸塩
一酸化窒素(NO)は硝酸塩(NO3–)から還元されて生じます。
一酸化窒素は血流を促進する作用が認められており、筋の栄養・酸素消費能が向上します。
つまり、栄養や酸素の使い方が上手くなるという効果が認められています。
そのため、硝酸塩の摂取は持久系競技のパフォーマンス向上が認められます。
また、高強度・短時間・断続的の瞬発系競技のパフォーマンスも向上させることが可能です。
310〜560mg(5〜9mmol)の硝酸塩を摂取することで、2〜3時間以内に左記の効果が得られることが報告されています。
(5)重炭酸塩
重炭酸塩は細胞外の緩衝作用を増強する効果が認められています。
運動の60〜150分前に0.2〜0.4g/kgの重炭酸塩を摂取することで、60秒以内の高強度のスプリント能力が要求される競技のパフォーマンス向上が認められます。
しかし、10分以上の競技では有効性が低下することが報告されています。
スポーツフード
日常の食事で摂取することが可能な栄養素を含有したサプリメントです。
アスリートにとっては身近に感じる商品ばかりだと思います。
我々は食事の摂取量には限度があります。そのため、運動量が増加することで必要な栄養素を食事から摂取することが困難となる場合があります。その場合は、サプリメントで必要な栄養素を補う必要が出てきます。その際は、サプリメントの使用を検討する余地があります。
しかし、成長期のアスリートは食習慣と生活習慣を見直し、食事から栄養素やエネルギーの必要量を摂取することが理想的です。安易にサプリメントに頼るのではなく、食事から摂取できないか検討してセルフマネジメント能力の獲得を目指しましょう。
(1)エネルギーサプリメント
スポーツゼリー、スポーツドリンク、スポーツバーは成分として炭水化物(糖質)を多く含んでいます。
そのため、主に試合や練習の前後に摂取されます。
スポーツドリンクをイメージしていただけたら理解しやすいと思いますが、試合や練習の休憩のタイミングでも摂取されています。
今回は、エネルギーサプリメントの有効な使用方法を2つお伝えします。
1つ目です。糖質であるブドウ糖やマルトデキストリンを含有する飲料に、ホエイ蛋白質を混合した場合、高強度トレーニング後の筋グリコーゲン補充率の上昇が促進されることが報告されています。つまり、筋疲労を予防する効果があることが報告されています。
2つ目です。持久系競技の運動前及び運動中に蛋白質と糖質を混合した飲料を摂取した場合、運動後の骨格筋の損傷が抑制され、回復が促進されることが報告されています。
現在、エネルギーサプリメントは蛋白質を含有していないものが主流です。
しかし、今後はプロテインパウダーや蛋白質を同時摂取する方法が確立されるかもしれません。
(2)プロテインパウダー
アスリートがサプリメントと聞いて、真っ先に思い浮かべるのはプロテインパウダーではないでしょうか。
蛋白質は魚、大豆、卵、肉などから摂取することできます。
アスリートのガイドラインとして、一般的な蛋白質摂取基準以上の摂取が要求されます。
また、運動直後は筋のグリコーゲン補充や、筋の蛋白質合成が亢進します。
しかし、食事から蛋白質を摂取した場合、消化と吸収には時間がかかります。実際、液体は約10分で小腸に移動するのに対し、固体は約3〜6時間の時間を要します。そのため、運動直後の蛋白質の摂取と、素早い吸収は筋蛋白質合成に有利であると考えられています。
運動直後に約10gの必須アミノ酸を摂取することで、24時間後の筋の蛋白質合成が最速となることが報告されています。消化・吸収が早い方がより良い効果が得られることは想像できます。
ところで、プロテインパウダーがどのように作られているかご存知でしょうか?
プロテインパウダーは、大豆、卵、乳、その他の植物性食品などから蛋白質を分離・精製して生成されます。
乳蛋白質は、蛋白質消化吸収率補正アミノ酸スコア(protein digestibility corrected amino acid score:PDCAAS)で最高値を示し、一般的にロイシンの含有量が多い蛋白質です。ロイシンは必須アミノ酸なので、体内で合成ができないため、食事から摂取する必要があります。
そんなロイシンは単独で蛋白質合成を促進することができ、乳蛋白質がアスリートに最適な蛋白質の1つであることに疑いの余地はありません。
また、乳蛋白質はカゼインとホエイに分画されます。
就寝前に摂取するプロテインパウダーの種類に関しては、カゼイン蛋白質の方が脂肪の酸化を持続さると報告されています。つまり、脂質の燃焼を持続する作用あるということです。
また、筋蛋白質の合成率および代謝率の上昇が認められたという報告もあります。
終夜を通して筋蛋白質合成および代謝率の上昇をもたらすという報告があるため、就寝前は蛋白質の摂取に最適な機会の1つであると認識しておく必要があります。
運動直後に摂取するプロテインパウダーの種類に関しては、多量の分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含有するホエイプロテインが筋蛋白質合成に有効であると報告されています。また、最近の研究では、運動直後はホエイプロテインの単独の摂取よりも、大豆蛋白質や乳蛋白質の混合摂取の方が、4時間後までの蛋白質バランスが優れている報告もされています。
左記の通り、消化の速度や蛋白質代謝の違いによりそれぞれの用途で利用することが理想と言えます。
メディカルサプリメント
栄養素欠乏症の改善や予防のために使用することを目的としたサプリメントです。
アスリートの栄養素の欠乏を評価する基準は未だコンセンサスが得られていないものが多いのが現状です。
もし、栄養素の欠乏がない場合、メディカルサプリメントを摂取することによるパフォーマンスの改善は残念ながら認められていません。
栄養素の欠乏が推測される状態と、メディカルサプリメントの活用方法を以下に記載します。
(1)ビタミンD
オーストラリア国立スポーツ研究所では血中ビタミンD濃度が30ng/ml以上で十分、20〜30ng/mlで不足、20ng/ml未満で欠乏としています。
しかし、ビタミンDの摂取量は紫外線に影響を受けます。紫外線を浴びることにより、ビタミンDは活性化し、体内で利用することが可能となります。そのため、屋内競技では十分な活性化ビタミンDを生成できないため、骨粗鬆症のリスク因子となる報告もあります。
また、皮膚のタイプに依存するので注意が必要です。
ビタミンDが不足すると、疲労骨折のリスクが増加するので、ビタミンDは積極的に摂取したい栄養素だと言えます。
アスリートの摂取ガイドラインでは未だにビタミンDの摂取量は確立されていませんが、約4000IU(100μg)/日のビタミンDを短期間で高容量を摂取する方法が適切である可能性があります。
(2)鉄
鉄分は血液検査で簡単に評価することができます。
貧血の症状として、氷を舐めたくなる症状が見られる場合があります。この症状の機序については未だに原因の特定には至っていませんが、貧血のスクリーニングとなると思います。
体内に貯蔵している鉄分が低下すると、周知の通り貧血の症状が出現します。
それだけでなく、筋の機能が低下し、トレーニングの効率やパフォーマンスが低下する一因となります。
そのため、貯蔵している鉄分を補充することを目的として、サプリメントを利用することはパフォーマンスの改善に有効である可能性があります。
今回の論文では具体的な摂取量などが記載されておりませんでしたので、貧血の症状がある場合は医療機関を受診して早期改善することを推奨します。
(3)カルシウム
カルシウムに関しての適切な指標はありません。
日本人のカルシウムの摂取量は減少傾向にあります。特に、減量期間中のアスリートはカルシウムの摂取量が著しく減少するため、注意が必要です。
約1500mg/日のカルシウムを摂取することでアスリートの骨の恒常性を維持することができるため推奨されています。
おわりに
今回はサプリメントのスポーツ現場でのサプリメントの活用と摂取におけるアスリートの責任〜応用編〜をお届けしました。
具体的な接種の方法をご説明させていただきました。
しつこいと思いますが、安易な考えでサプリメントを摂取することは、依存症を発症する危険性を孕んでいます。
本来、スポーツにおける選択肢の一部がサプリメントであるべきです。今後は、食事から栄養を摂取できないかを最優先に検討する意識を持つことが重要です。
特にジュニアアスリートにとって食事から栄養を摂取することは非常に重要です。
しかし、保護者の方々の協力がなければ達成することはできません。
今後もBooSTでは、アスリートのお悩みを解決する知識を発信して、日本のスポーツ界の発展に貢献して参りたいとおもいますので、応援よろしくお願いいたします。