【スポーツ講座】基礎代謝・スポーツ活動に伴う代謝の変化|アスリートの増量・減量へのヒント

【スポーツ講座】基礎代謝・スポーツ活動に伴う代謝の変化|アスリートの増量・減量へのヒント

こんにちは。BooSTの畠山です。

桜が満開の季節となり、春の到来を感じますね。

私の地元である五島市でも桜が満開となっています。

BooSTがお世話になっている方々の満開の笑顔を引き出すために4月も元気に活動していきますので、よろしくお願い致します。

今回は「基礎代謝・スポーツ活動に伴う代謝の変化」についてお話しをさせていただきます。

参考文献

今回は「臨床スポーツ医学 2018年11月号 現場で使えるスポーツ栄養学」を参考にさせていただきました。

筆者は国立スポーツ科学センター 近藤衣美氏です。

リンクを記載しますので、詳細を知りたい方はご参照ください。

はじめに

スポーツに年齢やレベルは関係ありません。

スポーツは運動機能・循環機能・神経機能・精神機能・免疫機能などにおいてポジティブな効果を与えてくれることが様々な論文で報告されています。

しかし、十分な栄養やエネルギーが摂取できていない場合はガティブな効果しか得られず、逆効果になる場合があります。

そのため、まずはエネルギーが何に使われているか理解することが大切です。

ヒトのエネルギー代謝

ヒトのエネルギー代謝は大きく3つに区分されます。

①基礎代謝

基礎代謝(basal metabolic rate:BMR)とは、「生命活動に必要な最小限のエネルギー代謝量」と定義されています。

基礎代謝を測定する場合の手順を記載します。

(1)以下の条件で呼気を採取します。

・12時間以上の絶食をした際の早朝の空腹時

・20〜25℃の快適な室温

・安静背臥位でリラックスした状態

(2)酸素摂取量と二酸化炭素排泄量からエネルギー消費量を算出します。

(3)以下の条件では安静時代謝量(resting metabolic rate:RMR)と定義されるので注意が必要です。

・座位で測定した場合

・12時間未満に測定した場合

②食事誘発性体熱産生

食事誘発性体熱産生(diet induced thermogenesis:DIT)とは、食物を摂取することで消費されるエネルギーを指します。

主に以下の2つが挙げられます。

(1)交感神経の活性化に伴うエネルギー消費

(2)食物の消化・吸収・同化に伴うエネルギー消費

DITは1日の総エネルギー消費量の5〜15%とされており、日本人においても約10%であることが確認されています。

③身体活動によるエネルギー消費量

身体活動によるエネルギー消費量(physical activity energy expenditure:PAEE)は、身体活動によって消費されるエネルギーを指します。

主に以下の2つが挙げられます。

(1)運動によるエネルギー消費量(exercise energy expenditure:EEE)

(2)日常生活によるエネルギー消費量(excess post-exercise oxygen consumption:EPOC)

ここで注目したいのはEEEだけでなく、EPOCでもエネルギー消費が亢進する点です。

つまり、アスリートは一般人と比較してエネルギーを多く摂取する必要があることです。

身体活動レベル(physical activity level:PAL)

運動に取り組むことでエネルギー消費量が増加します。

そこで、エネルギー消費の指標をご紹介します。

身体活動レベル(physical activity level:PAL)は、1日のエネルギー消費量が基礎代謝の何倍であるかを表します。

この指標を参考にすることで活動パターンによりエネルギー消費量を推定できます。

これまで日本人アスリートの身体活動レベルは、球技系は1.75、瞬発系は2.0、持久系は2.5、その他は1.75という数値が多く用いられてきました。

しかし、今回の論文では、多数の競技が2.0〜3.0に分布しており、競技やトレーニング期間によっては従来よりも高いPALを参考にしてエネルギー必要量を推定する方が適切かもしれません。

METs(metabolic equivalents)

エネルギー消費の指標をもう1つご紹介します。

METs(metabolic equivalents)は、運動時の酸素消費量が安静時の酸素消費量の何倍に当たるかを表しています。

METsは呼吸器や循環器のリハビリテーションでも頻繁に活用されている指標です。

この指標を参考にすることで各競技のエネルギー消費量はMETsの違いでも把握できます。

体重コントロールがエネルギー代謝に及ぼす影響

エネルギー代謝は以下の影響を受けます。

(1)水分や体脂肪率などの身体組成

(2)増量や減量による体重コントロール

アスリートが増量する場合、除脂肪組織(adipose tissue free mass:ATFM)を増加させ、脂肪組織(adipose tissue:AT)を減少させることを目標に取り組むことが一般的です。

増量

大学生のアスリートに500〜1000kcal/日のエネルギーを追加して1年間かけて増量に取り組んだ介入研究があります。結果として、体重が平均して9.7kg増加しました。内訳として、除脂肪量が5.2kg、体脂肪量が4.5kg増加したことが報告されています。

以下の組織を増量することでエネルギー消費量を増加させることができます。

(1)内臓脂肪

内臓脂肪は代謝率が高いです。

(2)骨格筋

骨格筋は運動時のエネルギー消費が高いです。

さらに、除脂肪量の増加を目的とした増量の際に蛋白質のエネルギー比率が高くなる場合、献立の変化がDITにも影響することを念頭に置いておくことが重要です。

減量

一方、減量の際には増量時とは異なる代謝適応が起こる。

一般的に1kgの減量には、エネルギー摂取量よりもエネルギー消費量が7700kcal多くなるように計画を立てる必要があります。

しかし、減量に比例して基礎代謝や身体活動の減少が生じるため、次第にエネルギーバランスが一定になります。そのため、減量の初期では計画通りの減少が見込めますが、次第に直線的な減量は計画通りに進行しなくなります。

左記が“ダイエットの停滞期”の原因です。

ウエアラブルデバイスの活用

「エネルギー消費量なんて簡単に算出できないだろ!」

「わざわざ推定式でエネルギー必要量を算出するなんて面倒!」なんて意見も出てくると思います。

そんな方々に朗報です!

エネルギーバランスを把握する方法として、健康増進からトップアスリートまで様々なシーンで利用されているのがウエアラブルデバイスがあります。

GPS、加速度センサー、心拍センサーなどが内蔵され、コンパクトに設計されているため、利便性が非常に高い点がポイントです。テクノロジーの発展により、アプリケーションでエネルギーバランスを把握できるようになりました。

長崎県や五島市でもウエアラブルデバイスを活用したアプリケーションが開発され運営されています。

長崎県「ながさき健康づくりアプリ」

https://nagasaki.karada.live

五島市「五島市健幸アプリ ぎばっと」

しかし、このようなウエアラブルデバイスは、各機器の測定方法に違いによってエネルギー消費量を推定するプロセスが異なります。そのため、各機器の誤差や特徴がどの程度かを考慮して使用する必要があります。

特に、市販されているウエアラブルデバイスが強度が高い活動を長時間行うアスリートに対しても利用可能かは今後検討していく必要がありますが非常に利便性が高いことに疑いの余地はありません。

おすすめのウエアラブルデバイス

私の懐には何も入ってこないので安心してください。本当にオススメできるものだけをご紹介します。

(1)Apple Watch

血中酸素濃度や心電図も測定できる点が圧倒的な利便性を実現しています。

(2)ForeAthlete 55 Black

ランニングに特化したウエアラブルデバイスです。

皆さんがお使いのウエアラブルデバイスもご紹介してください。

エネルギー必要量の算出方法

1.エネルギー消費量推定式の活用

スポーツの現場で簡便にエネルギー必要量を推定する方法として推定式があります。

エネルギー必要量の推定式は以下の手順が基本です。

(1)推定式に必要な変数(身長、除脂肪量、体重、年齢など)を代入して基礎代謝を推定する

(2)競技や期分けなどを考慮して身体活動レベルを代入する

(3)対象者の目的(体重維持、減量、増量など)に応じたエネルギー必要量を代入する

これまでにいくつかの先行研究により基礎代謝の推定式が作成されています。

基礎代謝量推定式を使用する場合、以下に着目する必要があります。

・研究の対象者

・変数の根拠

私は管理栄養士ではないので変数の根拠は全くわかりません。

そこで、今回の論文で報告されている式を2つご紹介します。

国立スポーツ科学センター式(Japan Institute of Sports Sciences:JISS式)

JISS式:28.5×除脂肪量(kg)

変数は除脂肪量(fat free mass:FFM)です。

そのため、FFMを測定した際の誤差に大きく影響されます。

実際にFFMは測定方法によって誤差が生じることが報告されています。普段とは異なる方法で測定したFFMを用いることはエネルギー必要量にも大きな誤差を生じる可能性があることに注意が必要です。

国立健康・栄養研究所式(National Institute of Health and Nutrition:NIHN式)

NIHN式:男性と女性で式が異なる点に注意が必要です。

男性:(0.0481×体重(kg)+0.0234×身長(cm)-0.0138×年齢-0.4235)×1.000/4.186

女性:(0.0481×体重(kg)+0.0234×身長(cm)-0.0138×年齢-0.9808)×1.000/4.186

変数は身長、性別、体重、年齢です。

誤差が生じにくい変数が用いられているため活用しやすい点がポイントです。

しかし、除脂肪量の多いアスリートにおいては過小評価する可能性もある点が問題です。

国立健康・栄養研究所のリンクを記載しますので、詳細を知りたい方はご参照ください。

JISS式とNIHN式のメリットとデメリット

それぞれのメリットとデメリットを表にまとめました。

メリットデメリット
JISS式式が易しい誤差が生じにくい
NIHN式誤差が生じやすいアスリートでは過小評価に繋がる可能性がある式が難しい

ウエアラブルデバイスと推定式のメリットとデメリット

それぞれのメリットとデメリットを表にまとめました。

メリットデメリット
JISS式式が易しい誤差が生じにくい
NIHN式誤差が生じやすいアスリートでは過小評価に繋がる可能性がある式が難しい

おわりに

エネルギー代謝は生命活動を維持するために必要不可欠であり、状況に応じて調節されています。

そのため、スポーツに取り組んでいる方々は運動量、エネルギー摂取量、エネルギー必要量、食事なども状況に応じて変化させる必要があります。

しかし、これらを反映させた献立を考案するには高度な経験や知識が必要になります。

現在はウエアラブルデバイスを上手く活用することでエネルギーバランスのセルフマネジメントが容易になりました。

BooSTでは、スポーツ栄養学のミニ講義を行った経験もあるので、お悩みなどがありましたら、どんどんご相談ください。

それでは、次回のブログでお会いしましょう。